建設費削減方法 コンストラクション・マネジメントの技術

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建設費削減って、具体的に、どうやるの?

㈱土地活用のCM方式での建設費削減は、見積範囲を通常の元請ゼネコンだけから、下請専門工事会社まで広げて建設費総額の80~85%を占める外注原価を直接交渉していき、建設費全体を圧縮することから成り立ちます。

ゼネコンが元々取引している下請協力会の下請専門工事会社から直接見積を取ることは不可能ですので、CM会社が取引している下請専門工事会社から見積を取るのです。

細かく順序を説明していきます。

無料サービスである概算見積や、事業収支などを提出の後、CM業務委託契約を締結頂き、その後、設計事務所に、100ページ以上に及ぶ、詳細な見積図面を作って貰います。

見積図面には仕様、寸法、部位の材料、品番、構造図では各部位の鉄筋本数・太さ・ピッチ・材質からコンクリート強度、電気や設備の配管ルートや材料など、建物を構成する全てが記載されているもので、通常のマンションですと100ページから150ページに及びます。

その図面作成が完了するまでマンションの構造的な形状や間取りが基本的に決定する基本設計完了時から最速で2か月程度、通常では3カ月程度の期間が掛かります。

CM会社は、その間は、間取りの打合せなどをしながら、総合建設会社に電話での個別依頼や、発注説明会を開催し、見積依頼を行います。
見積開始時期と、工期、支払条件などを伝え、見積参加の有無を確認します。

3社程度以上のゼネコンが集まったら、見積図面が出て来るのを待機しています。
見積参加を打診するゼネコンは、CM会社だけでも既に取引の有る会社から揃えることは可能では有りますが、通常1社程度は、建築主様からもゼネコン紹介をお願いしています。その理由は、当社としては、取引ゼネコンを増やしたい事、建築主様からすれば、競争する施工会社が増えれば、建築主様がしはらう建設費総額が安くなる可能性が少しでも高まるからです。相互にメリットがありますからね。
一般の建築主様の場合、ゼネコンと付き合いの無い場合も多く、その場合は、融資を受ける金融機関に建築主様から紹介をお願いして、金融機関から取引のあるゼネコンを紹介していただくことが多いです。金融機関としては、取引有るゼネコンへ1本電話を入れて調整するだけで、取引先に案件紹介するサービスの一環です。

建築主様からゼネコンを紹介されたら、CM会社はゼネコンに連絡を取り、CM方式での見積方法とメリットついて説明に行き出来る限り見積に参加してもらえるように話をします。

数量表作成と配布
そして、見積参加ゼネコンが集まり、見積図面が出来たところで、図面から数量を積算します。TOPページでお話をしたように、建設費は、数量×単価から成り立ちますが、CM会社が数量を積算する意味は、数量を統一して、金額だけの比較にすると建設費の交渉がしやすくなるため、そのようにしています。

下記のリンクをクリックすると、数量内訳書のエクセルファイルが、どのようなものか理解頂けると思います。
〇〇新築工事数量内訳書

例えば、型枠工事 普通型枠 3530㎡等という数量などと、図面上に記載されている全ての項目から数量を積算し、エクセルファイルに『数量表』として落とし込み、その数量に対して単価を入れてもらい、まずは統一図面数量に対して、業者が決定するまでは、金額のみの交渉を行います。

この数量表を図面共に、見積参加が決定しているゼネコンと、CM会社と取引の有る下請専門工事会社に、配布します。

第1回見積提出(総合建設会社と専門工事会社)
3週間程度の見積期間を置いて、ゼネコンと下請専門工事会社から、自社で施工可能な見積金額を一旦集めます。ゼネコンの内訳書付きの見積書を建築主様の前で開封して、現状の建設費を確認します。この時点の見積金額でも、一般の建築主様が発注している金額より安い金額が出てきます。
この時点で土地活用系の設計施工での受注しかしない会社の見積金額より3割程度は圧倒的に安いでしょう。

CM会社も何回か見積依頼した結果、建設費が高くて箸にも棒にも掛からない見積を提出するゼネコンからは、お互いに労力の無駄になるので、何度も見積を取ったりしませんので、一般の建築主様が見積を取るゼネコンの中でも、もともと、ある程度安い地場ゼネコンから見積を取っています。

ある程度安い地場ゼネコンの見積金額から更に、見積上の仕組みと交渉で、平均14%程度の建設費を削減するのが、㈱土地活用のCM方式の凄みです。

比較表の作成と、専門工事会社原価交渉
第1回目の見積が提出された後、複数のゼネコンの見積金額を工種毎に、分解して下記のような比較表を作成し、CM会社から見積依頼をしている専門工事会社への金額交渉の目途を付けます。

 

 

ゼネコンA,B,Cの右の欄の1回目(入替前)と記載しているところが、ゼネコンが通常の見積方法で自社の下請協力会の専門工事会社から見積をとった工種毎の建設費です。

通常の見積ですと、各工種の単価にもゼネコンの粗利を乗せていくことが一般的ですが、CM方式での見積では、ゼネコンが必要な粗利は、一般管理費の欄に計上していただき、各工種の単価には粗利を乗せない方法で、見積提出するルールとなっています。

そして、提出された見積書から、まずゼネコン同士の外注における各工事種目の建設費の比較をします。黄色が各工種のゼネコン同士の比較で一番安い金額です。

例えば、建築工事の杭工事 杭労務でゼネコンAは1160万円、ゼネコンBは990万円、ゼネコンCは950万円と出てきます。この中で比較をすると、一番安い杭労務工事は、ゼネコンCの950万円です。CM会社はこの一番安いゼネコンCの950万円より安く、CM会社と取引の有る杭業者に労務系金額(実際には重機リース代や運搬費、産廃処理費等が含まれる金額)交渉を行います。

㈱土地活用の取引のある杭業者さんはスーパーゼネコン数社や大手の建設会社の下請協力会に入り普段工事をしているコスト競争力のある杭屋さんですが、その普段大手に鍛えられている業者さんは、見積金額をぶつければ、地場ゼネコンが提出してくる杭工事費より安く出すことが普通に可能です。
仮に940万円で、CM会社と取引のある杭屋さんと労務金額が交渉が成立したとします。

CM方式では、ゼネコンの見積金額より安い見積金額が出た場合は、ゼネコンにその金額ごとCM会社と取引の有る下請専門工事会社に紹介して下請を入れ替えてもらいます。
すると全てのゼネコンがCM方式で受注した場合の杭労務系の工事費は940万円になります。

つまり、杭工事の労務は、ゼネコンAに対しては210万円削減でき、ゼネコンBに対しては50万円削減でき、ゼネコンCに対しては10万円の建設費削減になります。このように杭から内装まで全ての工種に対して、下請専門工事会社と直接金額交渉をして建設費の原価を固め圧縮していきます。

もちろん、ゼネコンの原価見積も見ますし、㈱土地活用でも概算見積時に各工種毎に予算を組んでいること、また過去のCM方式での発注単価データも全て持っていますので、現場の状態や、社会情勢など全てを加味して、CM方式で取引の有る優良な安くて良い専門工事会社との交渉金額を総合的な判断で設定してから、専門工事会社が無理なく可能な金額を探っていきます。
その際に、赤字になるような無理強いは絶対してはいけません。
道義的にもそうですし、後で、やっぱり足りないとか赤字になったなど言われた場合に、今後の取引を考えても若干でも補填してあげなくてはいけないのはCM会社になりますので(契約上はCM会社も補填する必要は無いのですが、取引先は大事なので、そこまで鬼にもなれません。)。

建設の原価見積を取ってみると、各々のゼネコンの原価は、高い工事種目も有れば、安い工事種目も有ります。

ゼネコンとの金額交渉と、第2回目のゼネコン見積提出・仮内定
専門工事会社の建設費原価の圧縮が完了したところで、ゼネコンに比較表と下請専門工事会社の比較表を渡し、各工種の金額の入替と、当社では直接見積を下請けから取ることが出来ない、仮設工事費と現場経費と一般管理費(粗利)=7ゼネコン持ち分の再検討を依頼して、2回目の見積の再提出をしてもらいます。

そして、検討済みの見積書を建築主様の前で再度開封して、与信や本社所在地などを加味しながら、どのゼネコンさんにお願いするかの仮内定をします。

総合建設会社と専門工事会社の面談・数量内訳調整
仮内定が終わると、受注出来なかったゼネコンにはその旨を伝え、受注できたゼネコンは、CM会社から紹介された下請専門工事会社とCM会社立ち合いのもと面談をして頂きます。その際、会社概要、決算書、工事履歴を提出してもらい相互に新規に取引を開始できるのかの判断を、ゼネコンと専門工事会社に依頼します。

原則当社と取引の有る専門工事会社は、優良な会社なので、まずゼネコンから弾かれることは有りませんが、新規の取引の体裁を整えていきます。

工事履歴とは、下請専門工事会社が、過去2-3年で、どのゼネコンのどの工事を幾らで受注したのかが一覧表に記載されているもので、その施工履歴を見れば、専門工事会社が普段、どの格のゼネコンと取引しているか一目瞭然で解ります。また、CM会社立ち合いのもとで、普段からCM会社が取引している実績のある専門工事会社であれば、お互いに安心して工事に取り掛かれるという心理的な面も加味して行います。

面談により採用可否の検討をすると並行して、内訳項目と数量の確認作業を受注の決まった、下請専門工事会社と、ゼネコンでそれぞれ行います。

この数量項目の確認作業は、受注者が仮内定するまでは、金額の単純比較をして金額交渉がしやすいよいに、CM会社積算による統一数量をもとに建設費見積をしていますが、その数量が必ずしも正しいという保証は有りません。

施工会社が、数量を確認し、自分で内容、金額についても納得している状態でなければ請負契約を締結する訳には行かないのです。この作業を行わずにCM会社積算数量のままの建設費では、仮に後で何かの数量が大幅に足りないとなれば、施工会社側が損失を被ることになり、商取引上の平等性に欠けることになります。

この項目数量確認作業は通常2週間ほどかけて行い、見積期間に設計事務所が並行して行っている確認申請の指摘事項での図面の大幅な変更がない限りは、建設費総額の0.2%程度の値上がりが生じ、確認申請での変更が有る場合には内容にもよりますが1%程度の値上がりがあるケースも生じます。
確認申請の指摘では、消防署が指摘してきたり、構造図面の審査担当者の指摘で、鉄筋量が大幅に増えたりすると、建設費が上がりやすくなります。

建設費確定と、工事請負契約
そして、面談と、全ての数量・項目の確認作業が終わったところで、建設費が確定して、建築主とゼネコンが、旧四会連合の約款に則った一般的な工事請負契約を締結します。

見積図面受領してから、工事請負契約を締結する期間は、2カ月から3カ月程度となります。

ここまで如何でしたでしょうか?

建築主様から見ると若干複雑に見えるCM方式ですが、基本的な建設費の交渉業務はCM会社がプロフェッショナルなノウハウに裏打ちされる方法で行いますので、建築主様は、CM業務委託契約さえ締結していただければ、基本的に、見積交渉に関しては楽で特にやることは無く、同一図面の建設費では最適化された、何処よりも安い建設費で請負契約を締結することが可能となります。

●【株式会社土地活用 代表取締役 越川健治】

(株)土地活用 越川健治

昭和52年5月19日生まれ。東京理科大学理工学部建築学科卒業、同大学院修了。ゼネコンでの現場監督・所長を経て2008年にマンションディベロッパーに開発担当として入社するが1年後リーマンショックにより退社。 2009年5月から個人事業主として建設費を最適化するコンストラクション・マネジメント(CM)業務を開始。 2012年7月に株式会社土地活用を法人化。 独立創業からのCM受託実績延床35,696㎡、753戸。

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