建設費の追加工事とは。
建設費と追加工事費について書いていきます。
請負契約書には、きちんと見積をしている場合、通常、工事契約約款と契約図面が添付されます。
そして、金文字の黒表紙の請負契約書類として製本されます。
請負契約図面とは、どの図面で契約を締結したのかが解るものです。
最初の、見積開始時の図面から、確認申請上の指摘事項に起因する図面変更、及び、VE提案による変更、施主要望による変更などを全て網羅し、どの図面条件で請負契約を締結したのかを明確にする必要が有るからです。
設計施工方式で、これらの手続きを経ないで、ざっくりとした図面、ざっくりとした請負工事金額で請負契約を締結した場合、建築主が圧倒的に不利な立場になります。どの図面で契約したのか明確になっていないのですから、建設のプロの施工会社は、どうにでも仕様変更が可能になるのです。こういう場合、見積条件が、あやふやな状態で、工事請負契約をして、それから詳細図面を書き始めるのですから、建築主は、どうにも出来ません。
一方で、契約図面が添付されてある工事請負契約書類が揃っていれば、建築主と設計事務所の承認が無い限り、施工会社は、図面と違う内容で工事をすることが出来ないのです。
この工事請負契約図面に書いてないことが発生した時に、追加工事費が発生します。
追加工事には、建築主が望むものと、望まないものの2パターンあります。
建築主が望む追加工事とは。
これは、建築主が、変更を希望した時ですね。ユニットバスの仕様を変えたいとか、タイルの仕様を変えたいとかは、良くある追加内容ですね。
住宅設備は、オプションで色々なものを付けたい要望が出てきます。特に、オーナー住居などは、ちょっとくらいお金が掛かっても、キッチンをハイグレードのものにやっぱり変えたいとか、そういう要望は増えてきがちです。
建築主が望まない追加工事とは。
まず、第一に考えられるのは、土の中の話ですね。
確認申請を出す際に、敷地内でボーリング調査を行いますが、調査は深さに寄りますが、1か所で35万円から50万円ぐらいの費用がかかり、全ての個所をボーリング調査するわけにはいきません。実際に杭を打ってみたら、広い敷地などでは、ボーリングデータから想定していた深さでは、実際に工事をしてみると、杭の先端が、固い支持層に届いていない場合が稀にあります。
その場合、実際の支持層の手前の長さまで打ったところで杭を止めてしまうと、建物が傾いてしまいますので、ゼネコンは緊急で、建築主に連絡を取り、余分に打設しなければならない杭の費用をざっくりとでもお伝えし、追加工事の承認を得たうえで、支持層まで杭を打ち込む手配をします。
ざっくりと伝えるというのは、1本だけの杭であれば、金額はある程度は杭業者に確認して算出できますが、全ての杭を打ってみないと実際にどの杭が図面上の伸びないと支持層に到達するのか解らず幾らかかるか判明出来ないからです。重機の現場に必要な日数も増えますし、立ち合いする職人さんの日数も増えますからね。
また、ボーリングを行った時期が冬などで、湧水の水位が低く記載されていても、春先から梅雨時などに、掘削工事(要は穴掘り工事)をするとちょっと降っただけで、水がどんどん湧いてきて、当初の予定より、掘削日数が掛かったり、ディープウェルやウェルポイントといった排水工事を追加したり、最悪は山留の工法変更しないと危険を伴う場合も出てきます。その場合も、建築主に施工会社が見積を提示し、追加工事になる可能性があることは頭に入れておいてください。
プールの中で工事は出来ませんし、もとのボーリングデータを元に見積をしているので、その見積条件と違うのであれば、契約図面とは違う条件なので、その変更費用は建築主持ちとなります。
地盤によってどの工法が使えるか判断しなければなりませんが、150㎡ぐらいの敷地でウェルポイントをやったら150万円から200万円ぐらい、ディープウェルで、すめば100万円ぐらいだと思います(水道局の下水費用が高い事を言われる自治体であれば、もう少し高い金額になる可能性も有ります。)。
また近隣住民の要望により目隠しをしたり、厳しすぎる近隣住民の場合は、値上がりする可能性があります。
全体の工事費から見たら微々たる金額かも知れませんが、建設費は、ちょっとした内容で、数百万は違ってきてしまいますので、頭には入れて置いてください。
後は、工事中の天災や、疫病、戦争などにより請負契約時に施工会社が予期できない事態が起こった時は、その対策について施工会社は負担を負えないので、建築主の追加工事のお願いをすることはあるかもしれません。
滅多に無いですが、今回のコロナ騒動などは、住宅設備などで納入予定していた建材が入荷できないで他の物を代替品として入荷するのに、余分な費用が掛かったなどは、施工会社のせいではないですからね。これらは、請負契約する民間(七会)連合協定工事請負契約約款にも包括的に定義されています。この約款は、7つ会が合同して、社会情勢や様々な問題に対処するために改定を繰り返した、日本で最も普及した、工事請負契約約款で、㈱土地活用のCM方式でも、この約款に基づいて請負契約を締結しています。
7会とは、
一般社団法人 日本建築学会
一般社団法人 日本建築協会
公益社団法人 日本建築家協会
一般社団法人 全国建設業協会
一般社団法人 日本建設業連合会
公益社団法人 日本建築士会連合会
一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会
ですので、建設業において、かなり権威のある団体が作っている工事約款だと思っていただいて結構です。建築学会は多くの大学などの研究機関も論文などを発表している期間で、私も建築学科の学生・院生の頃は、日本建築学会で論文発表などをしていました。今となっては、何も内容は覚えてはいませんし、読んだところで自分でも理解できないとは思いますが。
後、稀に出て来るのが、官庁指導の追加工事、消防の検査担当者の気まぐれで、追加工事になる可能性が有ります。
確認申請を出す時に、図面審査は、消防の図面審査を受けて捺印されて、確認済証がおり、その確認済証が下りた図面を元に、工事が始まってから、複数の検査時に、確認済証が下りた図面のまま工事をしてはダメ(検査済証を下ろさない)だと、各区の消防担当者の気まぐれで、確認済証の図面内容が破棄されることが有ります。
あなた方、図面審査とOKの捺印は、何の意味があるのと言いたくなりますが、相手は国家権力というか役所です。役所が気まぐれでダメだと言ったものはダメなのです。
内容も、担当者によってマチマチで、何が出てい来るかは、解りません。
追加工事は、頭の痛い内容のものが出て来る可能性は、0とは言えませんが、施工会社を当初の納得して契約をした内容と異なる内容が出てきた場合は、施工会社を損させるわけにはいかないので、多少に支出がある事は、ご理解頂けますようお願い致します。
これは、CM方式であっても、他の全ての請負契約であっても同じことが言えます。
●【株式会社土地活用 代表取締役 越川健治】
昭和52年5月19日生まれ。東京理科大学理工学部建築学科卒業、同大学院修了。ゼネコンでの現場監督・所長を経て2008年にマンションディベロッパーに開発担当として入社するが1年後リーマンショックにより退社。 2009年5月から個人事業主として建設費を最適化するコンストラクション・マネジメント(CM)業務を開始。 2012年7月に株式会社土地活用を法人化。 独立創業からのCM受託実績延床35,696㎡、753戸。