内訳書の基本的な見方
建設費には、仮設工事費、現場経費、一般管理費などの項目が有ります。
建設費の内訳としては、物件規模にもよりますが仮設工事費+現場経費+一般管理費が概ね15%から20%を占めて、
残りの80%から85%が下請専門工事会社に支払う外注費となります。
外注費の部分は、別途説明するとして、今回は、仮設工事費と現場経費、一般管理費について書いていこうと思います。
仮設工事費とは?
仮設工事費とは、建物本体を作る為に、主に仮設で設置する足場や、仮囲い、敷き鉄板、仮設トイレや安全看板、クレーンなどの揚重設備を設置する費用となります。現場で使う電気代や水道代それの引込や排水工事費用、職人さんの休憩用の詰め所などを設置する場合は、そこにストーブを置いたり、椅子や机を置いたりする費用も含まれます。
また、工事をする際に近隣住民に挨拶をしたり家屋調査をしたり、地鎮祭の設営費用、建物の寸法基準を打っていく隅出し、建物の配置を決める遣り方をしたりする費用、建物に傷がつかないようにスポンジやプラべニアなどで保護をする養生費用、現場の場内清掃費やクリーニング代なども、ここに含まれます。
ガードマンの人件費などは、仮設に入れるか現場経費に入れるかの分類は、各ゼネコンの実行予算の内訳基準により若干変わりますが、概ね建築主様に、建物をお引渡しするときには、取り払われて無くなるが工事をするのに必要な費用は、こちらに含まれて行きます。
この予算の組み方は、各ゼネコンで基準が有るので、それに則って、ゼネコンが経費計上をしていきます。
1000㎡程度のマンション建設であれば騒音振動計を設置することは、通常は求められませんので仮設には見込んでありませんが、近隣住民などに強く求められたりすると設置せざる得ないので、そのことが予め解っているのであれば、騒音振動計の費用を計上する必要が有りますが、見積時点で予め解っていない場合は、建築主負担で着工するために追加する必要が出てきます。騒音振動計は10カ月ぐらいで60万円など行きますし、付けてあっても、何か変わる訳ではないのですが、最近は近隣住民が要望してくるケースも有ります。大手の場合は大工事も多く、かなり高い建設費で受注していることも有り、近隣対策の為に、自主的に設置している場合も多いですが、正直、ずっと睨めっこして見ている人などいないので、余り意味がないことだとは個人的には思っています。
現場経費とは?
現場経費とは、ゼネコンが現場を現地で管理するために掛かる費用です。
現場経費の建設費に占める比率は、物件規模が大きくなればなるほど、小さくなります。
大きな現場であれば、物凄い大きな現場事務所を借りるというものでもないですし、小さな現場でも現場監督はRC造の万署になると、最低1名は現場常駐という形で付けないといけないためです。現場監督一人で1.5億円ぐらいの工事費の物件であれば十分に見れます。
現場監督が50歳超えると経験値は有るけど、身体がハードに動かすことができないので、若い現場監督を育成を含めて付けて、若い監督に身体に鞭打って行う配筋写真撮影や、生コン打ちの相番などをさせて、所長は、見積や図面チェック、業者手配など、頭脳労働を主に行う場合も有ります。
1物件で3億円ぐらいの建設費が有れば2人で見るのにはコストパフォーマンス的にも丁度良い規模ですね。
主に、工事期間中の現場監督のお給料、現場事務所の家賃、現場事務所で使う備品、事務所の高熱費、電話やFAX・ネットの通信費、現場監督の交通費、工事保険などが含まれます。僅かながら、現場打合わせで出す飲み物代なども含まれています。
余談ですが、少し余裕のある現場ですと、工事期間中に、お客様や設計事務所と食事に行ったりするときに、『今日は、うちで払いますので』と領収書を切って食べる食事代などが含まれます。
現場監督もたまには、会社のお金で飲食してみたいですし、お客様と一緒なら了承されるケースが多いです。僕が一緒に行くときは、基本的に僕が出すことにしたいですが、どうしてもと言われたら、ご馳走様でしたとお伝えします。
ゼネコンが飲食を、ご馳走してくれることは当然の事では全くないので、建築主様が、労をねぎらうために、ちょっと出して食事を監督に奢ってみたりすると人間同士の付き合いですから、一層頑張って働いてくれるとは思いますし、建築主様も現場監督も気持ちの良くなり仕事も捗ると思います。
一般管理費とは、現場ごとの粗利益
一般管理費とは、ゼネコンの1工事当たりの粗利です。
各社の内訳基準にも寄りますが、粗利から内勤の職員(経理・営業・積算)や役員報酬を払ったり、本社や支店の賃料・光熱費を払ったり、広告宣伝費を払ったりします。
そして残った金額が税引前の利益です。そこから法人税や諸税を払っていきます。
一般的に粗利が6%以上ないと建設業の継続事業は厳しいと言われており、地場ゼネコンなどは通常は8~10%程度の粗利を目指して営業活動しています。
㈱土地活用のCM方式でも、ゼネコンにはキチンと必要な分の利益は確保してもらえるように、見積段階では常に、お願いして見積提出をして頂いています。相手を赤字にしてまで、また、会社を継続させるための費用を無くして迄は安くして欲しいとは全く思っていないので、無茶な交渉は致しません。
仮に、3億払っても粗利は僅かに1800万円です。そこから内勤者の給料を払って賃料払っているのですから、真面目に建設業をやっている会社は決してボロ儲けしている訳ではないです。稀に、3億も払っているだから、真面目にやっているゼネコンが1物件当たり5000万円とか1億とかボロ儲けしていると勘違いしているような方も、いらっしゃるかも知れませんが、そんな事は、真面目にやっていれば全くありません。
一方で、広告宣伝費を莫大に使って、営業マンを大量に雇い、ショールームやら、支店を無駄に至る所に作って、持っている会社は、全部、受注できた建築主の建設費に、受注出来なかった建築主の営業活動費を乗っけて、更に莫大な利益を確保しています。
建設そのものの品質が良いとか、そういう違いの問題ではなく、受注出来た物件に、建築主が物件を取得するのには全く無駄な社内経費が乗っかっているから高いのです。
グーグルマップで皆さんが知っているような営業マンを大量に雇ってバンバン広告宣伝費を垂れ流している会社の『企業名 東京』で検索してみれば、如何に無駄な費用を払っているか理解できると思います。
その支店エリアで年間受注できる物件が4棟として、何人の職員が働いていて、幾らの賃料や維持費を払っているか考えたら、そんな会社に、営業に来てくれた有名な会社だと、何となく請負契約を締結することが如何に愚かなことか理解できると思います。
ゼネコン持ち分費用
上記の仮設工事費、現場経費、一般管理費の項目については理解できましたでしょうか?
上記の費用は、ゼネコンが工事や会社を継続させるために必要な費用であり、CM会社である㈱土地活用が、直接下請専門工事会社から見積を徴収することは不可能な項目です。
よって、㈱土地活用では、勝手に、この費用を『ゼネコン持ち分費用』と呼んでいます。
CM方式で、建設費交渉をするときは、仮設や現場経費、一般管理費の内訳金額について細かく交渉することは有りません。これらの『ゼネコン持ち分費用』に関しては、ゼネコンの方針や、現場監督の裁量に任せる部分が多く、ゼネコン各自が項目を出して金額を入れたものは、原則、尊重します。
私も元々、現場監督上がりですし、ここだけは、現場努力で、受注した建設費の中から利益を増せる部分であると、現場監督も、やる気が出る部分でもあるので、元々、予算を組んで、建築主様に会社が見積を提出し、了承いただいたものを、ミスから来る手戻り作業を少なくしたり、ガードマンの人数を調整したり、現場場内清掃は、週一回一斉清掃と20分だけ時間を取って、協力業者の職人さん全員で、掃き掃除をして清掃をして、清掃用の雑工・土工さんを呼ぶ人数を調整したり、現場事務所を少しでも安く、仕事しやすいところを探したり、工事中の電気や水道の無駄遣いを無くしたり、携帯での通話時間を短くして要点だけ伝えたり、職人さんみんなで、工事中の傷が極力少なくするように補修費用をしたり、職人さんのお昼の弁当で出るゴミは持ち帰りしてもらって産廃でお金を払って出すゴミの費用を極力少なくしたり、現場努力での倹約によって、利益を増していくことが可能だからです。
私も20代の現場監督の頃は、会社の利益と、良い建築を安くする為に、給料が、混み込み総支給17-19万円のボーナス無しとかの激安でも、8時朝礼から26時まで仕事漬けをしながら、涙くましい努力をしていましたからね。
今どきは、そんな給料では、まともな頭脳を持って現場監督をやる人はいないでしょうし、CM方式でも、現場経費は、ある程度の金額を建築主様は、ご負担いただくことにはなりますが、現場の内情を知ったうえで、仮設や現場経費の内訳や単価には、交渉しないということをご理解頂ければと思います。
ただし、全く交渉しないというわけでもなく、規模感や階数で概ね幾らぐらいの『ゼネコン持ち分費用』を見込んでおけばよいのかは、私も実行予算を組んで見積しようと思えばできますし、過去の発注金額もあり、またゼネコン数社を同時に相見積もりを取るため、ゼネコン同士の見積の出し合いによって、各社必要な金額で且つ、受注可能な金額を提出していただきますので、結果といて、一定の金額にはなる交渉がされていることになります。
『ゼネコン持ち分』に対しても、相見積もりを必ず取るということは絶対的に必要なことですからね。
まとめ
ここまでお付き合い頂き、有難うございました。建設費の中で、20%~15%程度を占める『ゼネコン持ち分』についての内容や、CM方式での当社の考え方をご理解を頂けましたでしょうか?
建築主様も、頑張って真面目に工事をしてくれるゼネコンや現場監督には、愛情を持って接していただければ嬉しいです。
●【株式会社土地活用 代表取締役 越川健治】
昭和52年5月19日生まれ。東京理科大学理工学部建築学科卒業、同大学院修了。ゼネコンでの現場監督・所長を経て2008年にマンションディベロッパーに開発担当として入社するが1年後リーマンショックにより退社。 2009年5月から個人事業主として建設費を最適化するコンストラクション・マネジメント(CM)業務を開始。 2012年7月に株式会社土地活用を法人化。 独立創業からのCM受託実績延床35,696㎡、753戸。